川のそばに、工場がある。背後には山。窓の外には、四季がある。
朝、ミシンに灯が入る前の工場は、静かだ。裁ち台の上に生地を広げ、まず手で触れる。厚み、伸び、目の詰まり方。ハサミを入れる前の、一瞬の静止。この判断の積み重ねが、一着の精度になる。
私たちが多く手がけるのは、性質の違う素材を組み合わせた服だ。伸びるカットソーと、凛とした布帛。扱いが難しいと言われる異素材のミックスも、力加減を変えながら、丁寧に縫い合わせていく。「変わったものが縫える」。それが、この工場が選ばれてきた理由のひとつ。
数を追うより、一着を、丁寧に。小さなロットにも、同じ手をかける。
工場を動かしているのは、この土地に暮らす人たちの手だ。地元の女性が働ける場所をつくりたい——そんな思いから、この工場は始まった。今日も、その手が動いている。
季節が変わると、窓の外の景色も変わる。変わらないのは、生地に向き合う静かな時間。